コラム

2018年12月18日

若年社員の「組織社会化」は2つの側面と2つの視点で考える

菊入 みゆき (きくいり みゆき)

菊入 みゆき

ワーク・モチベーション研究所 所長
シニアコンサルタント

皆さんの職場の今年度の新入社員は、今どのような様子でしょうか。彼らが配属されてから、半年余りが経過しました。職場に適応し、元気に活躍しているでしょうか。それとも、配属当初よりもトーンダウンした様子ですか。

社員の職場への適応は、組織行動研究において「組織社会化」という概念で様々な実証研究が行われています。組織社会化が適切に行われると、個人は組織に定着し、退職する可能性が低くなります。仕事の成果も出しやすくなるでしょう。組織にとっては、採用コストが抑えられ、業績も向上する、というメリットがあります。個人にとっても、ストレスが少なく、モチベーションが高まり、より快適に仕事をすることができるという良い点があります。

「仕事ができる」社員は、適応しているのか

先日、私が特任教授を務める大学に、卒業生が何人か訪ねてきました。その内の1人Kさん(男性、23歳)は、勤務先の販売会社で、高い営業成績を挙げ、表彰されたと話してくれました。生き生きとした話しぶりで、充実した様子がうかがわれます。しかし、一時期は悩みを抱え、辛い毎日だったそうです。ある先輩から、Kさんの仕事のやり方が気に入らないということで、かなりきつい風当たりを受けたことが原因とのことです。

「悩みまくって激やせしました。それで、他の先輩に相談したんです。そしたら、社内のいろいろな事情とかの情報やアドバイスをもらいました。自分でも考えてみて、その恐い先輩に対しては、立てるところはしっかり立てて、その上で、譲れないと思うところは丁寧に説明するようにしました。今は、その人ともまあまあいい感じで、仕事が楽しいです」

激ヤセからも回復したとのことです。 これが、まさに組織社会化の例です。一旦は悩みを抱え落ち込んだものの、現在は生き生きと仕事を楽しめるようになっています。

職務に適応すること、組織文化に適応すること

興味深いのは、業績を挙げているにも関わらず、悩みを抱え、不適応状態に陥ったという点です。組織社会化には、2つの側面があります。それは、職務への適応と組織文化への適応です。Kさんは、業績を挙げていたということですから、職務への適応は円滑だったのでしょう。業績を上げるための知識やスキルを身に着けることができていたのだと思います。しかし、組織文化への適応については、先輩との人間関係がうまくいかないなどの課題があり、ストレスを抱える結果になりました。Kさんの価値観が、先輩社員の価値観と異なり、軋轢を生んだと考えられます。

この事例で素晴らしいのは、「他の先輩から情報やアドバイスをもらった」というくだりです。組織の中に、社員の組織社会化をサポートする人たちがいるのです。ある人とうまくいかなくても、その他の人に相談できる、そして相談を受けた人が社内事情などの必要な情報を提供してくれて、アドバイスをくれる。こうした状況は、特に若い社員にとって大きな支援要因でしょう。

Kさん自身も努力をしました。積極的に相談を持ちかけ、アドバイスを自分なりに咀嚼し、自分の意識や行動を変えていったのです。組織社会化の過程で、成長を遂げたと言っていいでしょう。

組織社会化の2つの視点

上記の事例では、Kさんという個人が自分を変え、組織に適応しました。しかし、それだけでいいのでしょうか。実は組織社会化は、個人が変わるだけでは、組織にとってデメリットをもたらすことになります。社員の同質化です。同じような考え方、価値観、行動パターンの社員ばかりが増えることで、激動するマーケットへの適応力を失ってしまいます。組織の方も個人に合わせて変わっていく必要があります。

今回のKさんの事例について、組織が変わる方法を考えてみましょう。例えば、先輩社員たちに、新入社員の悩みや思いが伝わる仕組みを作り、新入社員だけでなく先輩社員も自分の行動を見直す場を設定する、という方法が考えられます。あるいは、これまで社内に暗黙の裡に存在した人間関係のルール(後輩は先輩のやり方に従うべきである、など)を、組織として変えていくムーブメントを作る、という方法もあるかもしれません。

組織社会化を、「職務への適応」と「組織文化への適応」という2側面、そして、「個人が変わる」ことと「組織が変わる」ことの2視点で捉えてみてください。個人と組織の両方が成長し、ともに世界の大きな動きに適応できる道を見つけましょう。

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