コラム

2017年03月29日

労働生産性向上に向けて

大住 俊樹(おおすみ としき)

大住 俊樹

HRコンサルティング局
チーフコンサルタント

昨今、政府が主導している「働き方改革」に多くの企業が取り組んでいます。「働き方改革」には幾つか意味がありますが、大きくライフステージや個人の職業観などに応じた“多様な働き方”を認めていこうという側面と、“長時間労働”を是正し、ワークライフバランスを促進していこうというという側面があります。年度末は多くの企業にとって次年度に向けた施策を検討する時期であり、JTBコミュニケーションデザインでも様々な企業からの委託を受け、日々従業員サーベイの結果分析を行っています。分析の結果抽出される課題は企業によって様々ですが、多くの企業に共通した課題の一つに、前述の“長時間労働”の問題が挙げられます。また、解決に向けた取り組みは、企業の捉え方や本気度によって内容やレベルも様々であるように感じています。

“長時間労働”が招く、労働生産性の低下

“長時間労働”の背景には高齢者が増え、若手を中心とした就業者数が減っていることによる業務過多という構造的な側面もありますが、原因はそれだけでないような気がします。労働生産性に関する、国際比較のデータがあります。日本生産性本部が発表している2016年度の労働生産性の国際比較データによると、2015年度の日本の労働生産性はG7の中で6位、OECD加盟国の中でも下位に属しアイスランド、イスラエル、ギリシャに次ぐ22位となっています。昔から日本人は勤勉な国民性だと言われ、高度成長時代にはエコノミックアニマルとバッシングされた程に日本の労働者は真面目に勤労してきました。ではなぜ企業の競争力にとって重要な生産性は低いままなのでしょうか?

大きな要因の一つとして、先に挙げた “長時間労働”があるのではないかと考えています。人間の能力には限界があり、集中力の持続時間は45分程度ともいわれています。また、就業時間中最も集中力が高まっている時間帯は午前11時前後と午後3時前後という統計データもあります。つまり、長時間働き続ける事は、実は企業の労働生産性を低下させる大きな要因の1つになっている可能性が高いと言えるのではないでしょうか。

日本固有の“優秀”の呪縛

労働生産性を高める方法として、分業化や自動化を推進して生産性を高めていく事が重要となりますが、既に製造業をはじめブルーカラーを中心とした生産現場においては、その取り組みは国際的にみてもかなり進んでいます。

一方で、コンサルタントとして様々な企業の現場を見てきて、ホワイトカラーを中心とした生産性という点では社内向け業務の比率が高く、まだまだ大きな改善余地があるように思います。ホワイトカラーの生産性向上が中々進まない背景として、日本人の仕事に対する価値観、或いは日本企業における企業風土があるのではないかと考えています。平たく言うと、仕事の本質的な価値を評価することなく、より多くの仕事(タスク)を完璧な品質で期限内に完了できる事が“優秀”であると考えている経営者層、マネジメント層が多いのではないか、という仮説です。

社員一人一人の勇気が会社を変えていく

時間は全ての人に対して平等に与えられ、どんなに優秀な人でも単位時間あたりにアウトプットできる量は限界があるはずです。長時間労働を前提としてワーカホリックに働くことを美徳とする企業経営者によって企業のDNAが生み出され、暗黙の企業風土として引き継がれてはいないでしょうか?

大量生産、大量消費の時代は終焉し、現在は「イノベーション」や「付加価値」が企業の競争力とされています。就業者数が減り人財枯渇時代を迎えている現在において、前述の価値観/企業風土は逆に企業の競争力を削ぐことに繋がらないでしょうか?経営者層やマネジメント層の意識を変革し、トップダウンで企業風土を変えていく事も重要ですが、それには多くの時間と労力を要します。企業の一員である社員一人一人が自身の仕事(業務)の目的(誰のためにどんな価値を提供しているのか)を真剣に考え、不要不急な仕事の優先順位を下げ、場合によっては切り捨てる勇気を持つことが、企業全体の労働生産性を着実に高めていくと考えています。

JTBコミュニケーションデザインでは、「労働生産性を高める働き方」に向けた社員、管理職の意識変革を支援しています。

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