コラム

2017年05月16日

注目するのは「違い」か、「共通点」か
-モチベーションの伝染から考える組織活性-

菊入 みゆき (きくいり みゆき)

菊入 みゆき

ワーク・モチベーション研究所 所長
シニアコンサルタント

職場の中で、社員のやる気(モチベーション)は、伝染しています。高いモチベーションの社員がいると、そのモチベーションがまわりに伝染し、まわりの社員のモチベーションも高くなるのです。逆に、低いモチベーションも伝染します。

どうすれば、よりよい伝染が起こる職場を作ることができるでしょうか。

高過ぎるモチベーションは、伝染しない

実は、高過ぎるモチベーションは伝染しません。自分と比べて、あまりにもモチベーションが高い人からは、伝染が起こらないのです。逆に、モチベーションが下がってしまう場合もあります。

これには、相手との関係の中の「どこに注目するか」という問題が関わっています。相手のモチベーションが高すぎる場合、人は相手と自分との「違い」に注目します。「この人と自分は、全然違う」と感じるため、学ぼうとか、見習おうという気持ちが起こりにくいのです。さらに、「この人は、こんなにすごいのに、自分は全然だめだ」と、自分のネガティブな面にも注目してしまい、自信を失い、モチベーションが下がってしまうこともあります。

しかし、相手のモチベーションが自分より、少しだけ高いと感じた場合は、事情が変わります。違いが少ないため、相手との「共通点」に注目します。「この人と自分は同じだ」と感じ、学んだり見習ったりしやすいのです。

モチベーションの高さだけでなく、性別が同じだったり、所属するグループが同じだったりすることも、同様の効果を持っています。相手と自分が「違う」と思うか、「同じ」と思うかによって、モチベーションの伝染の起こりやすさが変わります。「類似性」が伝染に大きくかかわっているのです。

上司は、なぜ職場で浮いてしまうのか

類似性の効果を活用して、良いモチベーションが伝染しあう組織を作ることができます。

多くの場合、モチベーションの伝染元となるのは、上司や先輩社員です。しかし残念ながら、上司や先輩がいくらがんばっても、部下や後輩がついてこない、というケースがしばしば見られます。これは、部下や後輩から見ると、自分と上司や先輩との類似性がまったく感じられない、つまり、上司や先輩が職場で「浮いている」状態なのかもしれません。

このような場合の対策は、大きく2つあります。1つが、ステップバイステップでモチベーションを伝染させることです。上司Aさんから、Aさんの次にモチベーションが高いBさんとCさんに伝染させ、BさんとCさんから一般社員である皆に伝染させ、というように、段階的に伝染を引き起こすのです。この場合、BさんとCさんには、職場の「インフルエンサー(影響を与える人)」として活躍してもらいます。職場にインフルエンサーが増えると、伝染がスムーズに起こります。

もう1つは、上司や先輩が自己開示を行うことです。「こういう理由があって、がんばっているんだ」「実は自分もやる気を失う時があるが、いろいろ工夫して、乗り切っている」などの、本音や裏話を率直に話してみます。部下や後輩は、「この人も、自分と同じように悩んだりするのだ」と理解でき、相手に類似性を感じることができます。また、「この人のやる気には理由がある」と理解することで、納得もしやすくなります。自己開示は、あまり形式ばらず、ランチタイムやちょっとした雑談の時間にできるといいと思います。また、懇親会や運動会などの社内イベントは、みながいつもと違う自分を出しやすく、自然に自己開示ができる場面です。

ダイバーシティだけでは機能しない

「違い」というキーワードは、職場のダイバーシティ推進における、主要な概念でもあります。互いの違いを認め合い、様々な人が様々な能力を発揮することを推進するダイバーシティ推進は、社会的にも組織を発展させるためにも意義ある取り組みです。しかし、「違い」だけに注目してしまうと、少なくともモチベーションの伝染においては、いい影響が出なかったり、逆にモチベーションや成果を下げてしまうケースもあります。

「違い」はあるが、「共通点」もあると感じられることが大切です。「共通点」は、前述のような人間的な悩みの共有によっても見出せますし、またなによりも、組織が目指すビジョンへの思いについては、「同じだ」と強く感じられることが重要です。「世界の人を幸せにする」「みんなの毎日を特別な日にする」など、それぞれの組織が掲げるビジョンについて、「そうだよね」「いっしょにやろう」と言葉を交わし合えれば、様々な「違い」があっても、「共通点」のほうをより強く感じるでしょう。モチベーションが伝染し、互いに高め合う職場を作ることができます。

本音を語り、ビジョンを語る場があること、語る文化があることが、「違い」を乗り越えて、モチベーションの伝染を引き起こし、組織を活性化し続けます。

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